世界最小の浄水フィルターを求めて

  • 蛇口一体型浄水器を開発するに当たって、最大の課題は「活性炭フィルターの小型化」であった。蛇口のボディに違和感なく内蔵できるサイズは、直径28mm未満。それは間違いなく、世界最小である(1998年当時)。思うように開発が進まず、田中章太郎は苦悩していた。なにしろタカギ史上初の挑戦である。社内にカートリッジ開発のノウハウがない。ノウハウがないから、誰にも質問できない。ひたすら参考書や文献を読み漁る日々が続いた。このとき、田中を突き動かしていたのは、「負けたくない」という情熱だけであった。粒状から繊維状へと素材を変更することで、なんとかサイズの問題はクリアできた。しかし、除去項目の設定や水量の調整など、課題は後から後から山のように湧いてくる。
  • 水はきれいなほうが良いに決まっている。しかし、フィルターの密度を高めると、水流が弱くなり、そのぶん使い勝手が悪くなる。また、最低でも4ヵ月間は効果を持続させなければ、商品として成り立たない。設計を変え、素材の配合を少しずつ変え、つくったサンプルは30以上。気の遠くなるような試行錯誤の末、ついに最高のバランスが見つかった。「これならいける」そう確信した田中は、設計担当の白武史考に新型フィルターを届ける。カートリッジさえできれば、もう間もなく完成するであろう。しかし、設計部門もまた、大きな壁と格闘していたのだった。
  • 田中章太郎 1997年4月入社(当時/24歳)
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