試作機第一号の完成

  • 設計が完成しても、苦難の道は続く。「水に弱いメッキ部品の取り扱い」「切り替えスイッチ部分の組み立て方法」「不良品の出にくい金型の設計」「各部品の経年劣化の検証」etc…開発チームは、休日を返上して製品づくりに没頭していた。田中がつくったカートリッジを、白武が製品に組み込み、山崎が一つひとつの部品を検査しながら生産しやすい体制を整えていく。当初は未知のプロジェクトに対して不安を持っていた3人であったが、完成が近付くにつれ、確かな手応えを感じていた。「もうすぐ世界初の製品が誕生する」
  • 疲労は溜まっていたものの、その表情は、喜びで満ち溢れていた。正月休みにも関わらず、自発的に会社に集まっていた。もはや入社2年目の新人の顔ではない。修羅場を乗り越えた一人前の技術者の風格があった。1999年6月23日。かくして試作機第一号が完成する。設計・デザイン・性能に一切の妥協はない。現時点でやれることは、すべて注ぎ込んだ。製品は「みず工房」と名付けられた。ただし、現在の洗練されたフォルムを獲得するのは、もう少し後の話。ここからのブラッシュアップが次なる目標である。そして3人は、また新たな課題に挑戦していくのだった。
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